『戦時下を知る手がかり』 弁護士 岩坂康佑
最近、憲法9条の改正が話題になっています。
日本の安全保障に関わる極めて重大な問題です。
この問題を考えるにあたっては、憲法学はもちろんのこと、世界のこれまでの戦争や安全保障について深く学ぶ必要があると思います。
特に、私のように戦争を経験したことのない世代は、勉強が必要です。
学ぶには様々なツールがあると思いますが、小説も戦時下の人々の様子を知るよい教材となりそうです。
ヘレン・マクロイというアメリカの推理・サスペンス作家がいます。
彼女は1904年に生まれ、1994年に亡くなりました。
2つの世界大戦を経験しており、作品には当時の様子が描かれています。
物資の不足や、灯火管制、他国のスパイの存在を疑って疑心暗鬼になる人々、情報統制、戦時中のアメリカ人からみた日本人の印象まで、様々なことが作品に盛り込んでいます。
日本人から見た戦争の記憶や記録だけでなく、戦時下における海外の人々の生活や考え方を知ることは、とても勉強になります。
戦争の意義を見つめ直す格好の材料です。
なお、マクロイの作品は本格ミステリ、また、サスペンスとしても非常におもしろいです。
その生き生きとした人物描写や、巧みな雰囲気作り、飽きさせない展開で、読む手が止まりません。
2000年代になるまで日本ではほとんど埋もれた状態となっていましたが、そうなっていたのがとても信じられず、もったいなく感じます。
憲法9条の改正を考える上で、学ぶべきことは膨大だと思います。
とにかく学ぶ姿勢を忘れないようにと自分を戒めるばかりです。
【弁護士 岩坂康佑】