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解雇について

はじめに
  1. 解雇とは
    解雇とは、使用者による、一方的な労働契約の解約のことをいいます。
    この解雇には、大きく分けて、①普通解雇、②懲戒解雇、③整理解雇の3つ種類があります。それぞれについては、後記します。
  2. 解雇予告手当について
    労働基準法(以下、「労基法」とします。)20条1項によると、使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。
    そして、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(同条1項)。
  3. 解雇理由証明書について
    労働者は、使用者に対し、解雇の理由につき証明書を請求することができます(解雇理由証明書、労基法22条1項)。なお、使用者が、解雇理由を書面で明らかにしない場合、30万円以下の罰金という罰則が規定されています(労基法120条1号)。
【解雇類型①】「普通解雇」について

解雇は、以下の要件に該当する場合、無効となります(労働契約法16条)。これを、解雇権濫用法理といいます。

  1. 解雇について、客観的に合理的な理由を欠くこと

    ■客観的合理的な理由とは、どんなものでしょうか?

    例1:勤務成績不良、能力不足など

    能力不足などが、解雇の客観的合理的理由に該当する場合でも、その範囲は、限定的に解釈されます。このため、少し能力が低いことを理由に、しかも会社から教育もなされないで行われた解雇は、客観的に合理的な理由を欠くことになり得ます。

    参考:セガ・エンタープライゼス事件(東京地決平成11年10月15日)

    例2:私傷病等による労務不能

    私傷病により労務の提供ができなくなった場合が、解雇の客観的合理的理由に該当する場合も、限定的に解釈されます。このため、休職制度が設けられているのに、休職を命ずることなく解雇した場合には、解雇の客観的合理的理由を欠くということになり得ます。

    参考:石長事件(京都地判平成28年2月12日)

  2. 解雇について、社会通念上相当であると認められないこと

    解雇理由にあたり得る事情が仮に存在するとしても、解雇という重大な手段を選択することが妥当かどうか(労働者にとって、過酷にすぎないか)について、以下をはじめ、様々な要素から判断します。

    • 労働者本人の反省の有無や、これまでの勤務態度
    • 労働者が行った行為と解雇処分との均衡
    • 他の労働者に対する処分との均衡
    • 使用者への影響 など

    参考:高知放送事件(最判昭和52年1月31日)

【解雇類型②】「懲戒解雇」について
  1. 懲戒解雇とは
    懲戒解雇とは、企業秩序を乱す行為に対する制裁罰であるところの「懲戒処分」として行われる解雇をいいます。
  2. 懲戒解雇の有効要件
    懲戒解雇は、「懲戒処分」の有効要件である以下(ⅰ~ⅲ)を満たす必要があります。

    1. 懲戒事由が就業規則等に明記されて労働者に周知されており、しかもその内容が合理的であること
    2. 当該懲戒規定に該当するような懲戒事由があること
    3. 社会的通念上の相当性
      • 当該行為の性質・態様等に照らして重きに失することがないか
      • 他の労働者に対する処分との均衡・公平性
      • 手続の相当性等(就労規則や労働協約上定められている手続を経る、本人に弁明の機会を付与している等)
【解雇類型③】整理解雇について
  1. 整理解雇とは
    整理解雇とは、使用者側の経営事情等により生じた従業員数削減の必要性に基づき労働者を解雇することいいます。
    整理解雇は、使用者側の事情による解雇であるため、その有効性は、前記①「普通解雇」の場合より厳格に、以下の要件(または要素)から判断されます。
  2. 整理解雇4要件(要素)
    1. 人員削減の必要性
      • 使用者の収支や借入金の状態
      • 受注・生産量
      • 資産状況 など
    2. 解雇回避努力義務を尽くしたか
      • 経費削減(役員報酬含む)
      • 新規採用の停止
      • 労働時間短縮
      • 配転、出向
      • 希望退職者募集 など
    3. 被解雇者選定基準が妥当かどうか
      例:年齢基準(一定年齢以上の労働者を解雇の対象とする)
      これは、基準としての妥当性を認める裁判例もありますが、その判断の評価としては難しいところがあります(年齢が高い労働者ほど再就職が困難な場合が多く、結果、整理解雇されることによる打撃が若年労働者より大きいという評価もあり得るからです。)。
    4. 解雇手続が妥当かどうか
      • 労働協約上定められた労働組合との協議を行ったかどうか
      • 使用者が、労働組合、労働者に対して、整理解雇の必要性とその内容(時期・規模・方法)につき適切に説明を行い、誠意をもって協議したかどうか
      • 使用者が、解雇される労働者に対し、解雇に対する補償内容などにつき納得を得るために十分説明しかたどうか など

雇止めについて

雇止めとは

雇止めとは、期間を定めた労働契約の期間が満了したことで、使用者が、契約の更新を拒絶することをいいます。
労働契約にかかわらず、通常の契約の場合、契約期間が満了すると、原則、その契約は終了します。他方で、更新を繰り返してきたような労働契約の場合には、その労働契約が更新されるものと信頼した労働者の信頼を保護する等のために、法律上、雇止めに歯止めがかけられています。

雇止め法理(労働契約法19条)

以下のⅰ~ⅲを充たす場合、労働契約が更新されたものとみなされます。

  1. 労働者が使用者に契約更新の申込をした場合、または期間満了後遅滞なく有期労働契約締結の申し込みをした場合
  2. 当該労働契約が過去に反復して更新されたものであって、雇止めをすることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められること

    または

    労働者が期間満了時にその労働契約が更新されるものと期待することに合理的な理由があること

    ■考慮要素

    • 業務の内容(業務の内容が恒常的か臨時的か、基幹的か補助的か)
    • 更新の回数
    • 雇用の通算期間
    • 契約期間管理の状況(更新手続が厳格か形式的か、契約書を作成しない等)
    • 雇用継続に期待をさせる使用者の言動
  3. 使用者がその申込を拒絶することに客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上の相当性もないこと

退職、及び退職の強要(勧奨)

退職について

期間の定めのない労働契約の場合、労働者は、いつでも退職の申入れをすることができます、そして、退職の申し入れの日から2週間が経過することにより、労働契約は終了します(民法627条1項)。

退職勧奨,退職強要とは

労働者が退職を希望していないのに、使用者が労働者に対し、退職を求めてくることがあります。
このように、使用者が労働者に対し、労働契約の合意解約や辞職を要求したり勧めたりすることを、退職強要(勧奨)といいます。

退職強要(勧奨)への対処

退職強要(勧奨)を受けた労働者は、それに応じる義務は当然ありません。その場合、使用者側に、退職に応じない意思を明確に伝えましょう。
それでも使用者側が、執拗に退職強要(勧奨)を繰り返したり、多数人で取り囲んで迫るような場合には、使用者に損害賠償責任が生じることもあり得ます(参考:下関商業高校事件・最判昭和55年7月10日)。
使用者に強要されたり、騙されたりして退職の意思表示をしてしまった場合には、それを無効としたり、取り消したりできることもあります。

なお、退職強要(勧奨)の場合、口頭でのやり取りが多くなるため、退職強要(勧奨)を受ける可能性が考えられる場合には、録音などにより証拠を残しておくことが重要です。