家族が逮捕されてしまった

Q&A目次

Q. 家族や知り合いが逮捕されてしまった。どうすればよい?

刑事事件で、ご家族や知人が逮捕されてしまったら、すぐに弁護士にご相談ください。刑事事件は、多くの場合、緊急性が高く、ご家族や勤務先、警察署、検察官との迅速な連絡や対処を行う必要があります。逮捕されている警察署やお住まいに近くの法律事務所の弁護士に依頼すると、すぐに必要な弁護活動に着手することができます。

Q. 逮捕されてからの手続の流れはどうなるの?

逮捕されてからの流れをご説明します。
この後の説明では、「被疑者」と「被告人」という言葉を使いますので、まずは、これらの言葉の意味をご説明します。

「被疑者」とは、犯罪者であると疑われていて、警察や検察の捜査の対象になっている人で、未だ起訴されていない(裁判にかけられることが決定していない)段階の人をいいます。
「被告人」とは、犯罪を裁く刑事裁判にかけられることが決定している人(起訴された人)のことをいいます。

逮捕されてからの手続の流れ

  1. 逮捕されたら(上図の①の段階)
    警察官は、犯罪をしたと疑われる人を逮捕することができます。逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3つの種類がありますが、どの逮捕であっても、その後の手続きの流れは共通しています。
    警察官は、逮捕から48時間以内に、被疑者について、

    1. 釈放する か
    2. 検察官に身体拘束のまま送致する か(いわゆる「送検」)

    を判断しなければなりません。

  2. 送検されたら(上図②の段階)
    送検を受けた検察官は、送検から24時間以内に、被疑者について、

    1. 釈放する か
    2. 裁判所に勾留請求をする か

    を決めなければなりません。

    勾留請求がされない場合、身体は解放されることとなりますが、検察官は、身体を解放した状態で起訴(裁判にかける手続)をすることがあります(これを「在宅起訴」といいます。)

  3. 勾留請求がされたら(上図③の段階)
    勾留請求がされると、裁判所の裁判官が、被疑者と面接し、検察官の勾留請求を認めるかどうかを判断します。裁判官が勾留請求を認めて、勾留決定をすると、被疑者は勾留されることになります。
    勾留とは、一定の期間、人の身体を拘束する手続です。拘束の期間は、原則として10日間ですが、やむを得ない場合は、検察官の請求により裁判官がさらに最大で10日間の延長を認めることもあります(さらに一定の例外的な場合には、さらに5日間以内の延長が認められる場合があります。)。
    勾留の間に、検察官は事件の捜査を進めて、証拠を集めたり、事件の関係者から話を聞いたりします。
    そして、検察官は、勾留の期間中に、被疑者について、

    1. 起訴する(裁判にかける) か
    2. 起訴しない(釈放する) か

    を決めなければなりません。

  4. 起訴されたら(上図④の段階)
    起訴されると、被疑者は「被告人」と呼ばれるようになり、裁判にかけられることが決まります。
    裁判が始まるまでの間も勾留が継続し、身体は拘束され続けます(上図⑤)。起訴されたからといってすぐに裁判が始まるわけではなく、逮捕されてから裁判が始まるまでの期間を合算すると、おおむね2カ月程度にも及ぶのが通常です。
    被告人の身体は、逮捕されてから裁判が終わるまで拘束されたままであるのが原則です。しかし、起訴された後であれば、「保釈」という制度によって、身体が解放されることがあります。「保釈」については、後にご説明します。

  5. 裁判手続(上図⑥の段階)

    1. 裁判の概要
      刑事裁判では、検察官から、被告人が有罪であり、厳しい刑罰を科すべきであるなどの主張がされ、被告人を有罪にするための証拠などが提出されます。また、弁護人からは、被告人にとって有利な主張及び証拠などが出されます。被害者など、事件の関係者や、被告人の家族などの証人尋問が行われることもあります。
      こうした手続を経て、裁判官は、被告人が有罪であるか無罪であるか、また、被告人が有罪である場合に、どのような刑罰を科すことが妥当か、ということを判断し、判決を下します。
    2. 裁判の期間
      判決までに何回の裁判期日を実施するかは、事件の複雑さや被告人が犯行を認めているか否かによって異なります。そのため、裁判が始まってから終わるまでの期間は、事件によって異なります。保釈の手続がとられていなければ、裁判が終わるまで、身体拘束が続きます。
  6. 判決の後
    判決が下された後、判決に不服がある場合には、判決の言い渡しを受けた日の翌日から14日以内に控訴の手続きをとることができます。

Q. 逮捕されてしまったら捕まっている場所から外に出ることはできないの?

逮捕されてから裁判手続が終わるまでの間に、身体を拘束されている施設(警察署や拘置所)から出ることができる場面は、いくつかあります。

  1. 微罪処分
    まず、逮捕されたものの、犯罪の内容がとても軽微で、検察官送致が不要であると警察が判断した場合には、「微罪処分」として、検察官に送致されないで身体が解放されます。
  2. 勾留がされない場合
    検察官に送致された後、検察官が勾留請求をすることは必要ないと判断した場合には、勾留請求がなされずに身体が解放されます。
  3. 勾留後、起訴されない場合
    勾留された後であっても、起訴できるだけの証拠が足りない場合や、被害者との示談が成立して起訴しなくてもよいと検察官が判断した場合には、起訴されずに身体が解放されることがあります。
  4. 保釈
    そして、起訴後については、「保釈」という制度によって、身体を解放させることができる場合があります。

    1. 保釈は、被告人が保釈の要件を満たしている場合に、一定の保証金を納めることを条件として、被告人を釈放し、もし、被告人が裁判中に逃亡したり、裁判所の呼出しに応じなかったり、証拠を隠滅したりした場合には、再度被告人の身体を拘束するとともに、裁判所が、納められた保証金を取り上げることができるという制度です。
    2. 保釈には、被告人側の請求による場合と裁判所の職権による場合とがあります。
      裁判所は、保釈を認めるかどうかを判断するにあたり、被告人に身元保証人や監督者となる人がいるかどうかや、被告人が定まった住居を有しているか、被告人が保釈後に事件の証拠を隠滅したり、被害者などの事件関係者を脅したりすると疑うだけの相当な理由があるか、事件の重大性、事件の性質・内容、被告人の前科・前歴の有無などの事情を検討します。
    3. 保釈の請求は、被告人自身のほか、配偶者、親などの近親者や弁護人からすることができます。
      起訴された後に、速やかに保釈の請求を行うためには、起訴される前の事前の準備が必要になります。そのため、起訴されることが予想される場合、起訴される前の早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 逮捕された場合、家族・知人と面会することはできるの?

  1. 一般の接見
    原則として、面会をすることは可能です。逮捕されて身体が拘束されている人との面会を、「接見」といいます。
    接見は、家族や知人など、被疑者・被告人の弁護人以外の人の場合には、平日にのみすることが可能です。また、接見の時間帯や、長さも決まっていますし、接見の際には警察官が立ち会います。
    しかし、否認事件(犯行内容を被疑者・被告人が認めていない事件)や、共犯事件の場合など、一定の場合には、接見禁止処分によってご家族の方であっても接見ができなくなることがあります。接見禁止処分がなされると、手紙のやり取りもすることができなくなります。
    弁護士は、接見禁止処分がなされている場合に、裁判所に対して、準抗告・抗告という手続をとることで、接見禁止処分を取り消すよう求める活動を行うことができます。
    また、全面的な接見禁止処分の取り消しが難しい場合でも、近親者など一定の人との面会については認めるように裁判所に対して申立てを行うこともあります。
  2. 弁護士の接見
    弁護士は、日時を問わず接見をすることが可能です。また、弁護士の接見に時間制限はなく、警察官の立ち合いもありません。弁護士であれば、接見禁止処分がなされていても接見をすることができます。そのため、ご家族や知人の方とのやり取りを弁護士が担うことができます。

Q. 弁護士に依頼すると、どんな活動をしてくれるの?

弁護人として選任された場合、弁護士は、次のような活動を行います。

  1. 起訴前の段階での活動
    まず、起訴される前の段階では、本人との接見、ご家族や雇い主などの関係者との連絡・面会、被害者との示談交渉などを行い、警察官や検察官に早期釈放を求め、不起訴になるよう様々な活動をします。
    逮捕された段階では、弁護士は、検察官・裁判官との面会により勾留させないための活動を行います。勾留されてしまうと、身体拘束期間が長くなるために、被疑者が職業を失う可能性もあるため、重要な活動となります。
    また、勾留されてしまった場合には、勾留や勾留延長に対する準抗告をして、被疑者が早期に身体を解放されるための活動を行います。
  2. 起訴後の段階での活動
    起訴されてしまった場合には、保釈を請求することもできます。起訴された場合には裁判を受けることになりますので、起訴前に引続いて、裁判で被告人の方を有利にできる材料を集めます。
  3. 裁判における活動
    裁判では、無実の人が冤罪により不当な処罰を受けることがないよう全力を尽くします。また、犯罪事実に間違いがない場合でも、執行猶予判決を求め、実刑の場合でも刑罰の内容が軽くなるようにする(たとえば、懲役刑の刑期を短くすること)ため、あらゆる手段を尽くします。
  4. まとめ
    逮捕・勾留されている段階で早期に弁護人を選任すると、速やかに証拠の収集・保全などに着手することができ、これに続く刑事裁判に向けて十分な準備活動ができるというメリットもあります。特に、事実関係の調査や証拠の収集には、ある程度時間を要しますので、真実を究明して適正な判決を求めるためにも、できる限り早期に弁護士にご相談されることをお勧めします。

Q. 少年事件の場合はどのような手続になるの?

  1. 逮捕・勾留
    20歳未満の者による犯罪(少年事件)でも、成人と同様に、逮捕・勾留されることがあります。
  2. 家裁送致
    勾留期間が満了すると、すべての事件が家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所では、少年を少年鑑別所に収容するかどうかが判断されます。少年鑑別所に収容する措置を、観護措置といいます。少年鑑別所では、少年の心身の発達の状態や今後の更生可能性についての分析がなされ、通常は最長4週間、非行事実の認定の観点から、一定の場合には、最長8週間収容されることもあります。
    また、この間に、家庭裁判所調査官による調査も開始されます。
  3. 少年審判
    1. 少年審判とは
      家庭裁判所による調査結果等をふまえて、家庭裁判所が審判を開始すべきだと判断した場合、審判が開かれます。
      審判では、裁判官が少年やその保護者などから話を聞いたうえ、少年の今後の更生のためにどのような措置をとるのが適切であるかを判断します。
    2. 少年に対してなされる処分
      審判の結果、何らかの処分が必要であると判断された場合、少年の反省の程度、家庭環境、非行行為の重大性等の事情によって、以下のいずれかの処分が決定されます。

      1. 保護観察
        少年を施設に収容するのではなく、家庭においたまま、更生を促す処分です。少年は家庭生活を送りつつ、保護観察官や保護司から生活指導を受けて、改善更生を図っていきます。
      2. 少年院送致
        少年を少年院に収容する措置です。少年は一定期間、少年院で矯正教育を受けることとなります。
      3. 児童自立支援施設・児童養護施設への送致
        少年を児童自立支援施設あるいは児童養護施設に送致する処分です。
    3. 試験観察
      審判において少年に対する処分を直ちに決めることが困難であると判断された場合には、少年を適当な期間、試験観察に付すことがあります。試験観察は、家庭裁判所調査官が少年に対して更生のための助言や指導を与えながら、少年が自分の問題点を改善していこうとしているかなどについて観察をする手続です。この観察の結果などもふまえ、裁判官が最終的な処分を決めます。
    4. 検察官送致
      少年が犯行時に14歳以上で、死刑、懲役又は禁錮に当たる刑が定められている罪に該当する場合には、事件が検察官に送致される場合があります。また、少年が犯行時に16歳以上で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合は、家庭裁判所は、原則として、事件を検察官に送致しなければならないこととされています。
      検察官送致がなされた場合、少年は、成人と同様に刑事裁判を受けることとなり、刑罰が科されうることとなります。

Q. 弁護士は少年事件でどんなことをするの?

  1. 弁護士は、まず、逮捕・勾留の段階においては、成人事件と同様に、検察官や裁判所へのはたらきかけを行い、身体拘束からの早期解放を求めます。また、被害者の方との示談交渉も行います。
  2. 家庭裁判所に送致された段階では、弁護士は「付添人」という立場になります。弁護士は、少年のご家族や学校の先生との面談による少年の環境の調整、家庭裁判所調査官や裁判官との面会・はたらきかけなどの活動を行って、少年の更生のために最も適切であると考えられる措置が採られるように尽力します。
  3. 少年事件においては、成人の刑事事件とは異なる視点や配慮が必要になります。当事務所では、少年事件にも積極的に取り組んでおりますので、ぜひご相談ください。

Q. 裁判員裁判はどのような手続なの?

  1. 裁判員裁判の対象となる事件
    裁判員裁判は、刑罰に死刑や無期懲役が規定されている犯罪など、重大な事件がその対象となります。具体的には、殺人罪や現住建造物等放火罪、強盗致死傷罪、危険運転致死罪などです。
  2. 裁判員裁判の特徴
    裁判員裁判は、3名の裁判官の他、国民から選ばれた6名の裁判員によって、被告人が有罪であるか否か、また、いかなる刑罰を科すかが判断されます。
    また、裁判所で行われる公判期日は連続して開かれ、審理が5日間程度まとまって集中的に行われるのが通常です。
  3. 弁護士の活動
    裁判員裁判においては、法律の専門家ではない裁判員の方々にも、十分に理解し、共感していただける主張・立証を行うことが極めて重要となります。わかりやすく、かつ、説得力のある弁護活動がなされなければならず、そのための数多くの工夫が必要です。
    当事務所には、裁判員裁判の経験を持つ弁護士が多数在籍しております。ぜひご相談ください。