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労働災害に遭われた方に

労働災害とは?

「労働災害」(労災)とは、労働者が労務に従事したことによって被った負傷、疾病、死亡などをいいます。
労災は、以下のように分類することができます。

  1. 業務災害
    • 労働者が事故等によって負傷、死亡した場合
      (建設現場で作業中に機械で負傷した、転落して死亡した等のケース)
    • 業務との関連で病気に罹患した場合
      (長時間労働によって脳・心臓疾患、うつ病を発症した等のケースや職場で生じる様々な心理的負荷によって精神疾患を発症したケース)
    • 業務との関連で病気に罹患し、自殺に至った場合
  2. 通勤災害
    通勤災害と認定された場合、業務上災害と同様の給付を受けることができます。具体例については、Q&Aをご覧ください。
労災保険による補償の内容

労災と認定されると、様々な補償を受けることができます。

  1. 療養補償給付…診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術、居宅における看護、病院への入院・看護などの療養給付が受けられます。
  2. 休業補償給付…療養中の休業の4日目から、1日につき給付基礎日額の60%が支給されます。これに加え、1日につき給付基礎日額の20%の休業特別支給金が支給されます。
  3. 障害補償給付…後遺障害が残った場合、障害の程度(障害等級)に応じて、一定額の年金または一時金が支給されます。
  4. 遺族補償給付…労災により労働者が死亡した場合、受給資格者である遺族には、原則として遺族補償年金が支給されます。

上記のほか、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付などが受給できる場合があります。

労働災害と認定される基準
Q1 労災保険法が規定する「業務災害」とは?

「業務災害」とは、「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」をいいます。「業務上」といえるためには、当該労働者の業務と当該負傷等との間に相当因果関係があることが必要となります。
「業務上」の判断基準は、
⑴ 労働者が事故等によって負傷、死亡した場合 と
⑵ 業務との関連で病気に罹患した場合
とに、分けて考えられています。 

Q2 労働者が、「事故」によって負傷・死亡した場合の「業務上」の判断基準について教えてください。

「業務上」といえるためには、
⑴ 業務遂行性
⑵ 業務起因性
を充足することが必要となります。

  1. 「業務遂行性」とは、「労働者が事業主の支配ないし管理下にあるなかで」、「事故」が起こったということを意味します。
  2. 「業務起因性」とは、「労働者が労働契約に基づき、事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められること」を意味します。
Q3 「業務遂行性」が認められる具体的なケースを教えてください。

職場で労働に従事していた際に生じた災害のみならず、職場での勤務時間における休憩中の災害のほか、事業主から命じられた事業場外での労働や、職場から離れて出張中に生じた災害などが該当します。

Q4 「業務起因」性が認められる具体的なケースを教えてください。

「業務起因性」の判断は、当該職場、当該労働に定型的に伴う危険が現実化したものといえるかどうかがポイントとなります。
そのため、「業務遂行性」があっても、「業務起因性」が否定される場合がありますので、注意が必要です。たとえば、自然災害や、外部から暴漢が襲ってきた、労働者本人の規律違反行為による被災等の場合は、業務起因性が否定される可能性が高くなります。

Q5 業務に関連して、「疾病(病気)」に罹患した場合の「業務上」の判断基準について教えてください。

「業務上の疾病」については、労基法・労基法規則において、「業務上の疾病」の範囲が定められています。労基法規則において列挙されている疾病は、特段の反証のない限り、「業務上の疾病」と認められます。それ以外の疾病については、業務に起因すると認定できる場合は、「業務上の疾病」とされます。
また、業務による心理的負荷と相当因果関係にある精神障害(うつ病など)の「業務上」認定については、厚生労働省平成11.9.14基発544号において詳細な判断基準が示されておりますので、ご参照ください。

Q6 脳・心臓疾患の場合に労災として認定される基準を教えてください。

発症前おおむね6か月間にわたって1か月80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務上の疾病として労災認定される可能性が高くなります(詳細については、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」厚生労働省平成13.12.12基発1063号をご参照ください)。

解決方法

労働災害に逢われた場合、以下のような解決方法を検討することが可能です。

  1. 労災保険の給付申請
    労働基準監督署で申請手続を行います。厚生労働省のホームページから申請書式をダウンロードして入手することができます。
  2. 民事上の損害賠償請求
    労災保険は、労働者に生じた全損害の内、一部分を簡易迅速に補償するものであり、会社(使用者)による民法上の損害賠償責任の範囲をすべて網羅するものではありません。たとえば、労災では慰謝料は補償されませんし、休業補償については、平均賃金の80%を超える部分は補償されません。
    そこで、会社(使用者)に対して労働審判や民事訴訟の手続により損害賠償を請求することが考えられます。
  3. 刑事手続
    被害を受けた労働者は、加害者を告訴する、又は、加害者の刑事手続の中で被害者参加するという手段をとりうる場合があります。

弁護士に依頼するメリット

  1. 労働災害発生後の速やかな証拠収集
    労働災害が発生した場合、災害が起きた状況や怪我の状況、労働環境等を立証するため、写真を撮影し、記録やデータを保存する等、証拠を収集・保全しておくことが大切です。
    通勤災害で交通事故に逢われた場合、速やかに警察に連絡し、病院、保険会社との連絡を密に行う必要があります。
  2. 弁護士への早期相談による助言
    >労災が発生した場合、会社が労災保険給付申請等の手続に協力しなかったり、労基署の調査に対して労働者自身に責任があると報告したりすることもあります。
    弁護士に相談することにより、今後、労働者として採りうる手段や見通しについて助言を受け、安心して問題の解決に向け、手続を進めていくことができます。
  3. 労災による療養休業中の解雇への対応
    業務上被災した労働者が療養のために休業している間は、労基法19条によって、会社が労働者を解雇することは制限されています。会社が、労災に逢った労働者に解雇通知を送付してきたり、休職期間満了により自主退職を促して来たりする場合が少なくありませんが、労働者が会社の退職要請に応じる必要はありません。
    このような場合、速やかに労災申請手続を行うとともに、弁護士が解雇を撤回するよう会社と交渉し、早期に問題の解決を図ることができる可能性があります。
  4. 会社との交渉による解決
    労災保険の給付だけでは、労働者の損害を十分に補償することはできません。労働者は、使用者に対し、労災給付ではカバーできない部分の損害(たとえば、慰謝料等)の損害賠償を請求できる場合があります。
    会社が労災保険からの給付がなされていることを理由に損害賠償に応じることを拒否しているようなケースでは、弁護士が会社と示談交渉をすることにより、裁判手続によることなく、会社に対し損害賠償金の支払を受け、解決することができる可能性があります。
  5. 裁判手続きによる解決
    会社が、労働者に対し、労災保険とは別に損害賠償を支払わなければならないケースでも、会社が交渉に応じない、又は、双方の主張に大きな隔たりがあり、交渉による解決が難しいという場合もあります。
    このような場合は、労働審判、民事調停、民事訴訟等の手続を利用することにより解決することが可能です。
よくある質問 Q&A(事例)
Q1 Aさんは出張中に宿泊していたホテルで就寝中に、火災に遭って死亡しました。労災認定されるでしょうか?

宿泊が、事業主から命じられた出張の業務を遂行するためのものであれば、原則として、労災と認められる可能性が高いと考えられます。ただし、出張中に、出張地を離れ、催し物を見物するなどし、その帰途において事故に遭った場合に労災と認定されなかったケースがあります。
最終的には具体的事案毎の個別の判断となりますが、事業主の支配ないし管理下を脱したといえるかどうかがポイントとなります。

Q2 Bさんは、会社で行われていた運動会に出場中にけがをしました。労災と認められるでしょうか?

運動会に出場中に被った災害が業務災害と認められるためには、運動会が社会通念上事業の運営にとって必要と認められるとともに、全員参加が強制され、出場しない者は欠勤扱いとされ、定例的に行われるものであることが必要とされています(労働基準局長通達昭和32.6.3基発465号)。会社の懇親会や社員旅行などについても同様の考え方が参考となります。

Q3 Cさんは、バスで通勤していましたが、いつもどおり、バスで会社から帰る途中でスーパーマーケットに立ち寄って買い物をし、日用品を購入しました。その後、Cさんは、再びバスに乗って帰ろうとした際に、負傷してしまいました。通勤災害と認められるでしょうか?

日用品購入のための日常生活の最小限度の行為として、通勤災害と認められたケースがあります。ただし、途中下車時間が日用品の購入時間として通常要する時間よりも長く、途中で別の行動をとっていたような場合には、通勤災害とは認められない可能性が高いと考えられます。