不動産問題

不動産をめぐるトラブルについても多くの相談が寄せられています。
ここでは、借地・借家問題でよく頂く質問について、以下のQAで説明いたします。

Q&A目次

借地のトラブル

1.「固定資産税だけ払ってくれればいいから!」と土地を借りたけど……

Q. 親戚から「土地を貸してあげるよ。賃料は土地の固定資産税を払ってくれればいいから。」と言われて土地を借りています。この契約に借地借家法は適用されますか?

A. 特段の事情がない限り、親戚の方との契約に借地借家法は適用されないものと考えられます。

借地借家法の適用を受けるには借地契約が賃貸借契約である必要があります。賃貸借契約は、貸主が目的物を使用させることを約束し、借主が目的物使用の対価である賃料を支払うこと及び契約が終了したときに目的物を返還することを約束することで成立します。
そして、判例は、建物の借主が該建物を含む貸主所有の不動産に賦課された固定資産税等の公租公課の支払を負担していても、その負担が建物の使用収益に対する対価の意味をもつものと認めるに足りる特段の事情のないかぎり、当該貸借関係は使用貸借(民法593条)であると認めるのが相当としています(最判昭和41年10月27日)。
本ケースでも、特段の事情がない限り、相談者の方と親戚の方との間に締結された契約は使用貸借契約と解釈され、借地借家法の適用はされないものと考えられます。

2. 地代の値下げをしてほしい

Q. 借りている土地の地価が下がってきているので、地代を値下げして欲しいと思っています。地主と交渉してみましたが上手くまとまりませんでした。他にどのような手段があるでしょうか?

A. 地代減額の裁判は調停前置ですので、まずは、地代の減額を求める民事調停を申立てることになります。

調停は裁判官と2人以上の調停員で構成された調停委員会が、申立人と相手方の双方の話を聞きながら、双方の譲歩による話し合いを行い、合理的な紛争解決を目指す手続です。
本ケースのような地代の減額請求調停であれば、簡易裁判所に申立書と必要な書類(土地の登記簿謄本や借地契約書、借地の固定資産税評価証明書など)を提出する必要があります。
調停はあくまで話し合いの場なので、調停で提示された内容に不満がある場合は調停を成立させないことを選択しても構いません。
もっとも、調停がまとまらなかった場合、簡易裁判所又は地方裁判所に訴訟を提起する必要が生じるため、調停の段階から弁護士に依頼をするのが有益だと考えられます。

3. 次回の更新をしないから借地を明け渡せと言われた

Q. 自宅の敷地を賃借している地主から、「相続に備えて不動産の権利関係を整理したいので、来年は土地賃貸借契約を更新しない。建物を壊して土地を返してくれ。」と言われてしまいました。土地から出て行かなければいけませんか?

A. 本件では、相談者の方が建物を使用している限り、基本的に出て行く必要はありません。

借地契約では、契約期間が満了しても、借地権者が借地上の建物を使用し続けている場合は契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条2項)。
そして、更新を望まない貸主の側は、遅滞なく異議を述べることで契約を更新したとみなされることを阻止できるのですが、貸主による異議が認められるためには「正当の事由」が必要です(借地借家法6条)。
「正当の事由」の有無は、①借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、②借地に関する従前の経過および③土地の利用状況ならびに④借地権設定者が土地の明渡しの条件としてまたは土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付(立退料)をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮するとされています。
今回のケースでは、①の借地権設定者側が土地の使用を必要とする事情が極めて抽象的です。借地人が自宅敷地として本件土地を使用し続ける必要性の方が高く、基本的には借地権設定者に「正当の事由」は認められず、建物継続使用による借地契約の更新が認められるでしょう。

4.「増改築は認めない!」と言われたけど……

Q. 借りている土地上の建物を増改築しようとしたところ、地主から「土地を貸す契約をしたときに増改築には賃貸人である地主の許可が必要と定めた。よって、増改築は認めない!」と言われてしまいました。何かとれる手段はあるでしょうか?

A. 裁判所に対し、土地の賃貸人の承諾に代わる許可を求めることができます。

まず、借地契約を結ぶにあたって、当事者同士の合意によって土地上の建物の増改築を制限するために、増改築に地主の許可を必要とする特約を結ぶことは一般的に行われており、裁判所もこうした特約を有効と判断しています。
もっとも、特約が結ばれているからといって一切の増改築が不可能になるかというとそうではありません。
借地人は、地主が増改築の許可をしない場合、裁判所に対して借地権設定者の承諾に代わる許可を与えるよう申立てを行うことができます(借地借家法17条2項)。
そして、借地権者からの申立てが行われると、裁判所は、借地権の残存期間や土地の状況、借地に関する従前の経過など諸般の事情を総合的に考慮して、許可をするかどうかを判断します。
こうした申立てを御自身で行うことが難しいと感じられた場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

5.「定期借地契約だ」と言われたけど……

Q. 地主から借地からの立退きを求められたので、「立退くのは構わないが、敷地の上にある建物を買い取って欲しい」と返答したところ「あなたとの借地契約は定期借地契約だから建物買取請求には応じない」と言われました。建物買取請求権は行使できないのでしょうか?

A. 本件で設定された借地権が、一般定期借地権(借地借家法22条)又は事業用借地権(借地借家法条)であれば、建物買取請求権は行使できません。

借地借家法には定期借地権という更新されない3類型の借地契約が存在します。定期借地権には①一般定期借地権(借地借家法22条)、②事業用借地権(借地借家法23条)、③建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)が存在し、①・②の定期借地権では、契約で借地借家法13条に基づく建物買取請求をしないことを定めることが出来ます。
もっとも、ある借地契約が定期借地契約と認められる為には、借地借家法上の要件を満たしている必要があります。
例えば、一般定期借地権であれば、存続期間を50年以上としたうえで、①契約を更新しない特約、②建物再築による期間延長を認めない特約、③建物買取請求権を行使しない特約を締結する必要があり、特約は公正証書による等書面によってしなければならないとされています。
逆から言えば、これらの要件・要式を満たしていなければ、借地権設定者と借地権者との契約で成立したのは普通借地権であり、借地権者は建物買取請求権を行使できます。
貸主との間で締結している賃貸借契約で設定されたのが定期借地権か分からないなどお困りの場合には、契約書を御持参のうえで弁護士に相談されることをお勧めします。

借家のトラブル

1. 借りている建物にトラブルがあるので修繕をして欲しい

Q. 借りている借家の屋根から雨漏りがしています。大家さんの負担で必要な修繕をしてもらう事が出来るでしょうか。

A. 契約内容や具体的事情にもよりますが、基本的に賃貸人の負担で修繕をしてもらうことができるものと考えられます。

民法は建物の使用収益に必要な修繕を行うことは貸主の義務であるとしています(民法606条1項)。したがって、民法の原則からすれば雨漏りの修繕のような借家の使用に必要な修繕は賃貸人ある大家さんの負担で行ってもらえます。
もっとも、修繕費用の負担を誰が行うかは特約によって変更をすることができるので、御自身が結ばれた賃貸借契約に修繕費用に関する特約がないか確認をしてください。
仮に、賃料が修繕費用を含める趣旨として相場より高額に設定されているにも関わらず、なお修繕にかかる費用を賃借人の負担とする特約が結ばれている場合など一定の場合には、当該特約が信義則(民法1条2項)や公序良俗(民法90条)に反するとして無効になる可能性があります。
疑問がある場合には弁護士に相談されることをお勧めします

2. 建物を借りている内縁の同居人が亡くなったら?

Q. 内縁の夫とその同居人名義で借りている家に住んでいるのですが、先日同居人が亡くなってしまいました。その人には相続人はいないのですが、大家さんから家を明け渡すよう言われたら、出て行かないといけないのでしょうか?

A. 出て行く必要はありません。

借地借家法は内縁関係にある者の居住権を保護するために、賃借人が死亡し相続人がいない場合に、内縁関係のある者に賃借権を承継することができるという定めを置いています(借地借家法36条1項)。
本ケースでは内縁の夫に相続人がいないので、上記の条文が適用され、遺された内縁関係者は借家の賃借権を取得することができます。
また、亡くなった内縁の同居人に相続人がいる場合でも、大家さんに対しては当該相続人が相続した賃借権を援用することができるという判例があります(最判昭和42年2月21日)。相続人が内縁関係者に借家の明渡しを求めてきた場合にも、諸般の事情を総合考慮して相続人からの借家の明渡請求を権利の濫用(民法1条3項)とした判例(最判昭和39年10月13日)があるので、これらのトラブルが生じたときには弁護士に今後の対応を相談されることをお勧めします。

3. 更新料は支払わないといけないの?

Q. 借家契約の更新時期を迎えたのですが、大家さんから「更新料を払わないなら出て行ってくれ」と言われています。更新料の法的根拠はないという話をネットでみたこともあるのですが、払わないといけないものなのでしょうか?

A. 契約に更新料の定めがある場合、基本的には支払わなければいけません。

更新料の支払に関して、民法は特段規定していません。もっとも、それは更新料を支払うか否かは建物賃貸借契約を締結する当事者の合意に任せるという趣旨で、賃貸人が更新料の支払を求めることを禁ずるものではありません。
そのため、賃貸借契約のなかで更新料の支払に関する定めがある場合には、更新料を支払わなければなりません。
本もっとも、更新料の額が極端に高額な場合には、更新料について定めた条項が無効になる可能性もありますので、弁護士にご相談下さい。その際、弁護士に更新料の定めの他に更新料の額も合わせてお知らせ下さい。

4. 定期借家契約とは

Q. 単身赴任をする数年間だけ持ち家を他人に貸して、家賃収入を得たいと思っています。そのような契約を結ぶことはできるのでしょうか?

A. 借地借家法上の所定の要件・要式をみたせば可能です。

借地借家法には、定期借家制度(借地借家法38条)があります。
定期借家契約を締結するためには、まず、借家契約書において期間を明確に定めておく必要があります(借地借家法38条1項)。そして、借家契約書とは別に、賃貸借契約が更新なく期間の満了によって終了する旨を記載した書面を賃貸人から賃借人に交付する必要があります(借地借家法38条2項)。これらによって、借主との間で定期借家契約を結ぶことができます。
ただし、契約期間が1年以上にわたる場合には、期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃貸人から賃借人に対し、期間の満了により借家契約が終了する旨の通知をしなければいけないことに注意してください(借地借家法38条4項)。

5. 借家契約の解除(賃料滞納による解除)

Q. アパートの賃料を1か月分滞納してしまい、大家さんから「契約を解除するので出て行ってほしい」と言われています。今の家には10年以上住んでいて、家賃の未払いは今回が初めてです。出て行かなければいけないのでしょうか?

A. このようなケースでは、大家さんから契約を解除することはできず、出て行く必要はないと考えられます。

借家の借主が賃料を滞納することは法的には債務不履行といいます。
しかし、判例は単に一回の債務不履行があっただけで直ちにそれを理由とした契約の解除をすることを認めておらず、契約当事者間の信頼関係が破壊されたといえる特別の事情がある場合に限って、債務不履行による解除を認めています。
賃料の滞納の例で言えば、信頼関係が破壊されていると言えるか否かは、家賃の滞納期間、これまでの滞納回数やその額、大家さんからの催告の有無やそれへの応答の有無などといった事情を総合して結論を出すことになります。今回のケースのように、1か月分の家賃を滞納してしまっただけ、しかも10年以上賃借をしているなかで家賃滞納は今回が初めてということであれば、信頼関係の破壊が認められる可能性は極めて低いでしょう。
ですので、大家さんの側から債務不履行に基づく契約解除をすることはできず、家から出て行く必要はないと考えられます。