『川崎にも「モリ・カケ」問題がある』 弁護士 畑谷嘉宏

森友学園・加計学園事件で、公文書隠蔽・改ざん・毀棄が大問題になり、情報操作が勝手に行われていることに対して民主主義の危機が叫ばれています。さらに、誰も責任を取らないため、公文書隠蔽・改ざん・毀棄のやり方が大手を振ってまかり通ることになり歯止めがかからなくなっています。これは国政の問題ですが、川崎でも公文書隠蔽・改ざん・毀棄が起こっているにも関わらず、隠滅した当事者個人の責任とされ、公文書隠蔽・改ざん・毀棄が平然と行われている体質・体制には全くメスが入っていません。

 

川崎市教育委員会会議議事録の録音記録(音声データ)が、嘘をついて隠され、嘘がばれそうになると音声データを消去してしまい証拠をなくしてしまう、会議録を改ざんすることが平然と行われました。

実教出版高校日本史Aの教科書を排除した、平成24年8月17日と30日の教育委員会会議の録音記録(音声データ)の開示請求に対し、川崎市教育委員会は、公文書でないことを理由に開示請求を拒否し、拒否処分に対して市民が異議申し立てをしたことから情報管理課の音声データの保存の要請に対し音声データはないと嘘の回答をし、情報管理課から音声データの存否確認の通知を受けるや、音声データそのものを消去してしまうという暴挙を犯してまで、物理的不存在を理由とする開示請求拒否処分をして、何としても音声データを出しませんでした。公文書毀棄という犯罪行為を犯してまで出したくなかったほど、重大な内容が録音されていたことがうかがわれます。

しかし、教育委員会は、データを消去した責任を問うのではなく、データがあるのにないと嘘をついた非行の責任だけを問い、三か月の停職処分としただけで、貴重な公文書を隠滅した責任を問わないだけでなく、そうした犯行が行われてしまう体質・体制、監督者たる教育長の責任を全く問うことがありませんでした。

そこで、音声データ開示請求をした市民が、川崎市を被告として、知る権利を害されたとして損害賠償の裁判を横浜地方裁判所川崎支部に起こしました。

裁判において、川崎市教育委員会は、音声データを開示していたにもかかわらず、音声データは不開示事由があり、開示されないものだから損害はないと全面的に争ってきました。そして、こともあろうに横浜地方裁判所川崎支部の裁判官はこの川崎市の言い分をそのままうのみして、不開示事由があることを認めるという驚くべき不当な判決を下したのです。教育委員会が不開示事由がないとして開示してきたものを後になって不開示事由があったなどとひっくり返すことができる訳がないのに、川崎支部の裁判官は、今から考えて不開示事由があればいいのだと手前勝手な理屈で不開示事由があることを認定し、情報公開条例が、公開することを原則とし、非公開とすることができる情報は必要最小限に止められることとする条例の考え方に真正面から挑戦してきたのです。

知る権利の制限、民主主義の危機は政治の世界だけではなく、司法の世界にまで広がっているということが明らかになりました。

原告らは、控訴して、川崎支部の誤った判決を取り消し、知る権利の擁護・前進と民主主義を守るために斗いを続けています。

【弁護士 畑谷嘉宏】