『過労死を生む「働かせ方改悪」』  小竹光洋

先月29日、またしても「働き方改革」一括法が、危険性を訴え続けた「全国過労死を考える家族の会」との面会も拒否し、参院本会議で自・公・維で強行された。世界でも異常な長時間労働を放置したまま、労働時間規制を全面的に撤廃し「24時間働かせ放題」、「過労死ライン」を合法化する「残業代ゼロ制度」だ。戦後日本の労働法制に初めて盛り込んだ「働かせ方」大改悪という以外にない。

2015年の提訴以来支援してきた「株式会社グリーディスプレイ青年過労死事件」は(2014年4月24日、就労していた亡渡辺航太氏(当時24歳)が、長時間不規則労働を原因として、帰宅途中に単独バイク事故で死亡)本年2月8日、横浜地方裁判所川崎支部で、通勤途上の過労運転事故を防ぐ安全配慮義務を認定した画期的和解決定がだされ解決した。

これまで、通勤帰宅途上の事故は、事業者の業務指揮命令外であり労働者の自己責任とされ、事業者の安全配慮義務違反が問われることはなかったが、今回裁判所はこれを認めた。今後、事業者に対策を求める社会規範としての意義がある。また、通勤途上の過労運転事故を防ぐための事業者の模範となる再発防止策も示した。

裁判所はさらに、次のように述べた。

「現在、あらためて「過労死」に関する社会の関心が高まっており、「過労死」の撲滅は、我が国において喫緊に解決すべき重要な課題であり、「過労死のない社会」は、企業の指揮命令に服する立場の従業員や、その家族、ひいては社会全体の悲願であるといえよう。これを達成するためには、「過労死」の防止の法的及び社会的責任を担うそれぞれの企業において、「働く人の立場・視点に立った『働き方改革』を推進して、長時間労働の削減と労働環境の誠意に努めることが求められていると思われ、そのような社会的機運の高まりがあると認められる」 「本件の悲惨さと、大学卒業後に未来を絶たれた被害者の亡航太の無念さ、その遺族である原告らの悲痛な心情と極度の落胆と喪失感に思いを致すとき、社会的な意義をも有する民事訴訟を担当することのある裁判所においても、無視することは許されないと思われるのであり、当裁判所は、本件事故に係る本件訴訟の解決の在りようについて、真摯に、深甚に、熟慮すべきであると考えるところである」

特に今回強行採決された「高度プロフェショナル制度」は「過労死」を生む制度といわざるを得ない。政府にこの和解内容をよく理解せよといいたい。

「働き方改革」一括法は成立したものの、実際に動かすには少なくとも90項目にわたる政省令・指針などを定めなければならない。それを決める労働政策審議会の審議はこれから始まる。労働者を保護するための「乱用防止」措置を明記させるなどの取り組みが不可欠だ。また各職場で「残業代ゼロ制度」を導入させないたたかいが重要になる。

「働かせ方」改悪法の廃止と本物の「働き方」改革の実現は、疑惑まみれ、悪法推進の安倍政権を打倒する道が近道だが・・・

小竹光洋