『古都の秋』 弁護士 児嶋初子

先日、お墓参りに奈良へ、同窓会出席のため、京都に行って来ました。

奈良では、お墓参りの翌日、初日の正倉院展を見ました。玳琩(たいまい)や螺鈿などを散りばめた華麗な工芸品や、麻を用いた様々な宝物が展示されていました。
紙と麻で造られたきれいな刺繍飾りの付いたくつがありましたが、中国のトルファンでも似たくつが見つかっているそうで、中国製と見られています。また、正倉院宝物と同時代に朝鮮半島に栄えた新羅にかかわる宝物も多くあり、新羅琴などが展示されていて、この時代の国際交流を実感することができました。

京都での同窓会の翌日は、友人達と仁和寺に行きました。仁和寺の金堂裏堂に描かれている五大明王の壁画を、初めて公開するとニュ-スで見て、是非見たいと思い、行きました。五躰の明王は、それぞれの特徴が有り、372年という時間の経過が有るにもかかわらず、描かれたときのままのような、鮮やかな赤や青の色彩を保っていました。この場所は、お寺の僧侶も、ろうそくの薄暗いあかりでしか、見ることがなかったとのことです。

仁和寺の入り口で、高校生が入場者に、「源氏物語スタンプラリ-」の用紙を渡していました。源氏物語では、朱雀院が女三宮を光源氏に託し、自身は「西山なる御寺」に出家するのですが、その「御寺」が仁和寺といわれていることから、スタンプラリ-で巡る名所の1つとなっています。また、仁和寺は、徒然草の一節に出てくるのを、はるか昔、学んだことを思い出しました。「仁和寺にある法師」が石清水八幡宮の本堂にお参りに行く前に、入り口の門まで行って帰ってきてしまった、という話で、兼好法師は、「少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。」と結んでいます。

さわやかな好天の日、古都の秋を楽しみました。

【弁護士 児嶋初子】