『二ヶ領用水の桜』 弁護士 児嶋初子

3月下旬、私達の事務所では、皆で、近くの二ヶ領用水に花見に出かけた。
昼休みの時間を利用して、徒歩で約20分。南武線宿河原駅に近い清流の岸辺で、お弁当を広げ、満開に近い桜の花を見上げながら、のんびりと春のひとときを楽しんだ。
二ヶ領用水は、1611年に完成したものであるが、江戸に入府した徳川家康は、周辺の水田開発に意を用い、その命を受けた代官小泉次太夫が、荒れ果てた多摩川下流一帯を詳しく調査し、稲毛、世田谷、川崎、六郷の4ヶ領を結ぶ用水路を完成させた。工事の完了により、荒地であった周辺の地域では、新田開発が進み、良質な「稲毛米」が生産されるようになった。用水は、水田や梨畑の灌漑だけでなく、生活用水としても欠くことのできないものとなった。
宿河原の街を流れる用水路は、その約20年後に、二ヶ領用水の下流で水不足が起こり、新しい用水路として、宿河原取り入れ口のある船島から上河原用水と合流する下綱までの約2.3キロの用水路として完成された。
現在、「宿河原桜堤」と言われ、その両岸は桜並木が美しく、「二ヶ領用水の再生」を願う市民の運動によって保全され、治水の機能を生かしながら、水に親しむ護岸の整備が行われてきた。清流の両岸に続く桜のトンネルは見事で、川崎の桜の名所であり、市民の憩いの場となっている。
徳川家康の、江戸の町づくりにつながる、わが町の歴史を思い、先人たちの残してくれた美しい自然を楽しんだ1日であった。

 

【弁護士 児嶋初子】