『アフターコロナの政治はどうなるか』小竹光洋

緊急事態宣言発令から2か月、ようやく解除されたが、いろいろな施設や「3密」のある場所への外出は、極力避けるように求められていて、なかなか正常化に向けて経済活動を再開させていくことが難しくなっている。ワクチンが早期に開発されて、コロナ危機以前の水準まで回復するには長い時間が掛かるだろう。

家にいる時間が多く、テレビや新聞でのコロナのニュースにいささかうんざりしてきたが、これからの生活を考えた時に、コロナとの共存生活を模索せざるを得ない。

新型コロナは、瞬く間に世界中に感染した。地球的規模で追及する多国籍企業・グローバル企業中心で営まれる経済の弱点が現れて大混乱に陥っている。その結果、生産活動の停止や消費の激減、貿易の減少、中小零細企業の経営破綻、大失業などが各国で起きている。

13月期の国内総生産(GDP)は年率換算3.4%減で、消費税率を10%に上げた直後の昨年1012月期の7.3%減に続き2期連続マイナス成長となった。

緊急事態宣言の影響で、雇用や企業の生産活動などの経済指標が軒並み悪化している。4月の労働力調査では、パートやアルバイトなど非正規労働者は2019万人で前年比97万人減と14年以降で最大のマイナスになった。就業者数は前年比80万人減の6628万人と、7年4カ月ぶりに減少した。

安倍政権は医療費や介護利用料の負担増・年金の実質削減など全世代の社会保障切り捨てを行ってきた。いま新型コロナ対策で大きな役割を発揮している公的・公立病院の再編統合なども全国的に推し進めてきた。

国民の命や暮しを無視し、国家の私物化をしてきた結果が、こうした雇用や企業の生産活動、医療の崩壊など危機的な状態に現れてきたことがよくわかる。

アメリカは、入院病床を減らし、保険業界・医療・製薬業界などに民間資本を導入し、2800万人の医療無保険者を医療サービスから排除してきた結果、コロナウイルス感染者や死者数が世界で最も多く、大混乱に陥った。また、5月上旬の失業率は、戦後最悪の17.2%2,507万人を記録し、失業率は戦後最悪を更新して20%を超える恐れがある。

経済は依然として1930年代の大恐慌よりも悪い状態にある。

格差拡大のもと、黒人やヒスパニックの方々のなかで死者や失業者が多いことも大問題になっている。トランプ大統領は崖っぷちに追い詰められている。

国連の世界食糧計画(WFP)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で失業者などが増え、十分な食糧を確保できない人の数が今年の末までに昨年と比べて倍増し2億5000万人以上に達するとの報告書を発表した。

市場にまかせる新自由主義・利潤第一主義、規制緩和万能、福祉切り捨ての社会でいいのかと多くの人々が感じ始めているのではないか。

コロナ危機の中で、経済的・社会的に弱い立場に置かれている人々に大きな犠牲が強いられていることや医療・介護、保健所などの制度が不十分で遅れていることなどが明確になった。

産業や経済のあり方も変える必要がある。命にかかわる大事なものは、ある程度を国内で自給できる方向に変えていくことが必要ではないか。食料自給率を高め、自然エネルギーへの転換、医療・介護物資の国内生産の強化などが求められる。

深刻な危機の犠牲を最小限に収束させ、その危機を乗り越えた後には、より良い日本、より良い世界にする、そういう契機にしていくことが必要だと思う。

毎日の報道を見るたびに、公文書の改ざん、廃棄、虚偽答弁、勝手な法解釈、官僚人事の操作、利権政治、議事録なしなど全くあり得ない手口を駆使してきた今の政権に期待はできない。早く退陣させることが近道か。                              2020.06.04 小竹光洋