『川崎市における保育園職員の就労実態』弁護士 工藤猛
私は、「川崎市保育問題交流会」という団体に所属し、川崎市内の認可保育園で働く保育職員の実態を調査し、労働環境の改善などを市や国に要請するという活動をしています。本年も川崎市の認可保育園で働いている方にアンケートを発送し、その結果を集計し、2020年7月6日に記者会見をしました。
アンケート集計結果を見ますと、賃金の低さ、残業代の未払いという問題が顕在化しているといえます。
賃金の低さで言えば、株式会社立保育園の若年層の年収が250万円以下である割合が約50%と高く、保育職員の年収だけでは、家族を養うことすら困難です。さらに、非正規の職員に至っては、約6割の方が年収150万円未満と回答しており、単身で生活していくことさせできない状況にあります。
残業代の未払いでいえば、約7割の保育職員が残業をしていますが、残業代が完全に支払われている割合は、約20%にすぎません。このように、労働基準法さえ守られていないことがわかりました。
介護業界もそうだと思いますが、保育業界も賃金が低いです。このような福祉業界で働く人は、人のために役に立ちたいという気持ちで働いている方が多いと思います。賃金の低さなどの不満はあるが、「人の役に立つのであれば・・・」「子どもたちの笑顔を見るのが嬉しいから」と、やりがいを感じているからこそ、賃金が低くても働いているという状況だと思います。
これは、賃金が低く、労働時間の長い中でも、「できる限り続きたい」という就業継続意識を持っている保育職員は、71.5%と多く、「定年まで続けたい」という12.8%を加えるとおおよそ8割の保育職員がいることに裏付けられていると思います。
このような現実を目の当たりにした、将来保育業界で働こうと希望している方は保育職員になりたいと思うのでしょうか。やはり、保育職員の労働環境を改善しなければ、保育職員が減少してしまうのではないでしょうか。現在共働きが当たり前になり、保育園の存在が重要視されていることについては、言うまでもありません。将来の保育職員が減少しないためにも、現在の保育職員の労働環境の改善が必要であると考えます。
以下にアンケート集計結果の概要のリンクを載せました。このアンケートの最後の部分には、現場で働く保育職員の声も含まれていますので、是非ご覧いただければと思います。
【弁護士 工藤猛】