『人権擁護委員会の活動について』弁護士 岩坂康佑

当事務所の弁護士は、全員が神奈川県弁護士会に所属しています。弁護士会には委員会という組織があり、各分野に特化して様々な活動を行っています。

私は人権擁護委員会に所属しています。人権擁護委員会は、市民の皆様からなされた人権救済の申立てを受けて、その事件の調査を行い、人権侵害があると認められた場合には弁護士会として人権侵害行為の主体に対し警告や勧告などの措置を採るということを主たる活動としています。委員の弁護士は、第三者的な立場から人権侵害の有無を判断します。人権擁護委員会の委員は、人権感覚が鋭く、人権問題に熱意をもって取り組む弁護士ばかりです。

人権救済の申立ての内容には様々なものがありますが、中でも刑務所内での出来事が問題となる事案が多くあります。刑務所は刑事裁判で有罪判決を受け、懲役刑や禁固刑の実刑判決を下された人が収容される施設で、刑の執行と受刑者の更生・健全な社会復帰を目的としています。そのため、刑務所の安定した管理・運営のために、受刑者には様々な生活上の制約が課されることになります。しかし、正当な理由がなくなされる制約や、いき過ぎた制約は許されません。受刑者であっても人権の保障された人であることにかわりはなく、その人権が不当に制約されることは憲法上認められないのです。

ある出来事が人権侵害に該当すると認められるかどうかは、簡単に判断できる問題ではありません。いかなる人権が、どうして、どのようにして、どの程度制約されたといえるのかを、よく見ていく必要があります。人権擁護委員会の委員たちは、事件の調査結果に基づき、人権侵害の有無やその程度についてしっかりと議論して結論を出すようにしています。その議論に接していると、人権問題の奥深さを感じずにはいられません。

【弁護士 岩坂 康佑】