13年かけた相続事件が解決しました。

1 13年かけた相続事件が解決しました。

13年かかりましたが、親の残した不動産を守りたいなど依頼者の初期の目的をほぼ達成することができ感慨深いものがあります。

13年もかかった1つの要因は、意思能力のない人を守るための成年後見制度が、意思能力のない人を守ることができない致命的欠陥を持っているということです。意思能力のない人を介護する人が、お金を自由に使えなくなるからと成年後見制度を利用することに反対した場合に、事実上成年後見制度を使うことができないということです。

本件の場合、父親の死亡に伴う遺産分割協議が出来ず、結局意思能力のない母親が死亡した5年後に、父親の遺産分割と母親の遺産分割を始めるしかなかったのです。

2 被介護者の預貯金が自由に使えないからということは、介護者によって、被介護者の預貯金が自由に使われるということを意味しています。本件でも裏付けのない多額の預貯金の引き出しが目立ちました。成年後見をすり抜けた結果として多額の使途不明金が発生するのです。介護者の成年後見すり抜けを許さないためには、この多額の使途不明金を法律上の原因に基づかない不当利得として返還請求をすることになるのです。これは、民事訴訟として家庭裁判所ではなく地方裁判所で裁判をするのですが、ここでも介護者の恣意がまかり通る余地があるのです。

本来、使途不明金については、被介護者という他人の預貯金を管理する介護者に、善良な管理者として、被介護者の必要のために使用するべき責任があるので、被介護者のために使用したとの主張・立証責任があるはずのものです。ところが、裁判所が介護者の裁量の範囲が広い、すなわち、何にどのようにお金を使うかは介護者の判断にゆだねられる、との考えかたをしているため、介護者が使ったお金は被介護者のためではなく介護者のために使ったのだということを、介護者の責任を追及する者が負わなければならなくなるのです。これが長い年月を要した第2の要因です。

レシート・メモ・手帳・日記・家計簿・介護施設で作成された介護記録などありとあらゆる資料を探し出し、分析し裁判官に理解してもらえるようにするために膨大な時間と労力を要したのです。

本件の場合、依頼者がこれらの貴重な証拠を保存していて、それらを探し出していただき、それらの背景事情についてもかなり詳しく再現して頂けたので、裁判官の認識を大きく変えることができ、裁判所自らが和解案を提案して、解決の道筋を付けることができたのです。

3 レシート・メモ・手紙・手帳・日記・家計簿・介護記録など貴重な証拠に救われ、長期間の労力がむくわれ不正をただすことができた事例でした。

弁護士 畑谷嘉宏