自己破産の手続きが目に見える形で生活再建に役立った事例 弁護士 畑谷嘉宏
1 弁護士に相談する方法があることを勤務先の会社の相談部署から教えてもらい、自宅に近いということで相談に来られました。
債務総額が700万円を超えており、自己破産の道しかありませんでした。
自己破産の手続きを弁護士に依頼をして、月初や月末に返済のために金策に追われ続けた生活から解放され、まず貯金ができるようになりましたと報告があり、しばらくしてから仕事に集中することができるようになったので昇給しましたと喜びの報告がありました。
2 弁護士が介入して返済が止まっても生活が楽になるとは限りません。収入に見合わないお金の使い方を改めなければやっぱりお金が足りなくなるからです。
相談者の場合、数種類のクレジットカードの使用で生活費をまかない、足りなくなるとクレジットで借金をするというくり返しですぐに給料がすべて返済にまわされることになり、メルカリで所有物を売っても焼け石に水で、クレジットで金券を購入し金券ショップで現金化するなど最後は銀行のおまとめローンを借りることができましたが、ふくれあがった借金とそれに加わる利息のためすぐに行き詰まってしまったのです。
3 相談者の場合、返済金づくりに追い回されている中で、生活するために生活の中での無駄を省くことが必要なことだと感じとっていました。お金をかけるゲームをやめ、見栄を張る交際費をやめ、生活費を生活に必要なものだけにすることができていたのです。だから弁護士に依頼して返済する必要がなくなったとたんに給料で生活できるようになったのです。
返済金の工面に追われ続けた相談者が辿り着いた結論は、収入に見合った生活をするということであり、それは必要になったらクレジットで買物をして、借金の返済もクレジットでというクレジットを基本とする生活様式からの転換であり、クレジットに依存することに対する反省でした。
収入に見合った生活をする。欲しいものがあったらお金を貯めて買う。必要な出費は計画的に貯めるという最もシンプルな生活原則に辿り着き、それを実践できるようになったのです。
自己破産の手続きは、ご本人の生活の仕方の改善があってはじめて役に立ちうるものだということを改めて考えさせられた例でした。