『司法修習生と若手弁護士の懐事情のウラ話』弁護士 林裕介
前々回、司法修習生についてのご説明と、2011年から、司法修習生が、国から給料をもらうことができず、貸与制(要するに借金を入して生活をしていく)に変わったというお話をしました。
2011年より前の司法修習生は給料をもらっていたということ自体、ご存じない方が多いのではないでしょうか。
確かに、司法試験を受けて、司法修習に行くという道を選んだのは、自分の自由意思です。
しかし、司法修習生は、朝9時から夕方5時30分まで、弁護士事務所や裁判所で研修をしなければなりません。また残業があることも多々あります。要するに、時間的に拘束されることを、国から義務付けられます。
この貸与を受けると、修習が終わり実務に出た際には、約300万円の借金を負うことになります。これに加えて、大学の奨学金や法科大学院の奨学金(現在の制度では、司法試験の受験するには、原則として法科大学院を修了しないといけません。)を加えると、約1000万円の借金を負って弁護士の実務に出る友人も沢山います。
ですので、司法修習生は、国から貸与金を受けて当面の生活を送りますが、借金ですので、生活を切り詰め、借金のかなりの割合を使わずに貯めて、来るべき返済開始に備えているというのが、実情です。
少しでも生活を楽にするために、司法修習のない土日にアルバイトをしようとしても、それは国がなぜか許可をしないため、できません。
私は、それまで何の縁もなかった盛岡で修習をするよう、国から命じられました。修習開始まで住んでいた千葉からの引っ越し費用は自費で、一人暮らし用アパートの費用も当然自費でした。
そして、司法修習の最後の2か月は、埼玉県和光市において、全国に散っていた司法修習生が集合し、修習の総仕上げと修了試験があるのですが、盛岡からこの和光市に引っ越す費用も自費でした。皆さんも引越しのご経験がおありかと思いますが、1年間に2回の引っ越しは、かなりの経済的負担となります。
司法修習生は、司法試験受験のために法科大学院の学費支出を迫られ、司法修習をしていくにおいても様々な支出を迫られ、経済的に圧迫されています。この負担は、司法修習生から弁護士になった後にも、借金というかたちで若手弁護士が背負うことになります。「弁護士は稼げるから、すぐに返済できるのではないか」と仰る方もおられるかと思いますが、弁護士の増加により、弁護士の収入はかなり減少しています。こうした状況で、数百万円の借金は、本当に重くのりかかります。
現在、若手弁護士が集まり、司法修習生の給料制復活をめざし、国に対して訴訟を提起しているところです。
今回は、少し暗いお話になってしまいましたが、司法修習生や若手弁護士の懐実情について、皆様に少しでも知っていただきたく、書いてみました。