『古書をめぐる冒険 その2』 弁護士 岩坂康佑
前回のコラムにて、ブックオフでは有名作家の有名作品が100円で手に入りやすいことを書きました。
出版年が古い作品や、マイナーなために市場にあまり出回っていない作品、絶版の作品などは、なかなかブックオフで見つけることができません。
ブックオフで手に入りにくい作品は、個人経営の古書店で探すことになります。
個人経営の古書店は、お店ごとに商品の個性があります。何でもそろえているところもあれば、特定のジャンルに特化したお店もあり、多様です。
推理小説についても、その分野に強い店とそうでない店があります。特に、私が好きな海外の古い推理小説は、一見すると推理小説がありそうな店構えのお店でも、ほとんど扱っていないということがしばしばです。
しかし、店構えだけで、「推理小説はこの店には置いていない」と安易に判断してしまうと、時として貴重な本との出会いを逃しかねません。
ある日、私は、友人のKさん(私と同じく海外の古い推理小説が大好き)とともに、神保町を訪れていました。推理小説を捜している途中で、何の気なしに音楽関係の古書を扱う店に立ち寄ってみると、なんと、Kさんと私が熱心に探していたシリーズの作品が売っていました。
その作品は、推理小説専門店のご主人をして、「なかなか出てこない」と言わしめるほどに珍しいものでした。それが、あろうことか、音楽関係の古書店に置いてあったのです。見つけた瞬間は、「どうしてこの本が、どうしてこの店に」という衝撃で、思考がフリーズしてしまいました。(なお、その本は、珍しさに見合った高いお値段がついていましたので、残念ながら購入は見送りました。)
探し物をするときは、それがなさそうな場所にも目を向けてみるべきだ、という教訓になる出来事でした。