『2019年台風19号による水害について川崎市の責任を問う』弁護士 林裕介
1 2019年台風19号について
昨年10月12日から13日にかけて襲来した台風19号により、川崎市内各地において甚大な水害が生じたことは、まだ皆様のご記憶に新しいところかと思います。とりわけ、川崎市の山王、宮内、諏訪、二子、及び、宇名根の地域では、各地の排水樋管(地面に降った雨水を多摩川に排水する管きょ施設です。)から水が逆流し、多大な浸水被害が生じました。現在、この水害について、回避することができた「人災」ではないかという点が、非常に大きな問題となっています。
2 水害の責任はだれにある?
そもそも、排水樋管を開け閉めするゲートの、平時(川の水位が低いとき)の役割としては、排水樋管ゲートを開けて、生活排水や雨水を川に流すということにあります。他方、洪水により川の水位が高くなった場合には、ゲートを閉めて、川の水が樋門を通して住宅側に流れ込む(逆流)ことによる浸水被害を防止することが、排水樋管ゲートの重要な役割です。このような排水樋管の役割から見ても、河川の水位が高くなった場合には、逆流による浸水被害を防ぐために、排水樋管ゲートを閉めるのが、大原則です。
これを、昨年の台風19号の際の、川崎市の対応について見てみると、台風の影響による大雨により多摩川の水位が上昇し、10月12日15時以降、各排水樋管において順次、河川水が逆流する危険性の高いレベルに至っていました。それにもかかわらず、川崎市は、排水樋管のゲートを全く閉めることなく、危険な状態のまま何らの措置もとらなかったのです。これにより、多摩川の河川水が逆流し、結果として、住宅地において浸水被害を増大させたことが、指摘されています。
後において、川崎市は、このような杜撰な対応につき、市民から多数指摘を受けたにもかかわらず、正面からの説明を避け続け、現在に至っても対応の不備を認めていない状況です。川崎市による水害の長期対策が遅々として進まない中、川崎市が、水害の責任に正面から向き合わなければ、水害の原因・真相を踏まえた対応を望むことはできず、迅速かつ抜本的な再発防止策の実施も、到底望むことができません。
3 最後に
以上を受けて、台風19号により被害を受けた市民の方が、川崎市の責任を問うべく、裁判に向けて立ち上がり始めています。この訴訟の目的としては、①真相究明(水害の責任が川崎市にあること)、②川崎市が市民に対して謝罪及び適切な賠償を行うこと、そして、③水害の再発防止が掲げられています。
昨年の台風19号に起因し、川崎市に対し、責任追及や適切な賠償、そして、水害の再発防止策の早期実施を強く求めていくことについて関心のおありの方は、当事務所にご連絡ください。
【弁護士 林裕介】