農山村の疲弊の深刻さ

誰も住まなくなった農山村の宅地・建物・田畑・山林等の不動産について、所在する市役所(小さな町村を合併して市域が拡大している)から固定資産税の不払いによる預貯金の差し押さえがなされたことの相談がありました。事情があって、一家は離散していて、市役所は戸籍をたどって川崎に居住する相続人を探し当て固定資産税の督促をしてきたのですが、支払いをしないので預貯金を差し押さえをしてきたということです。

相続した当時は、まだ親類や近所で農業をしている人が耕作してくれていて、わずかながら農作物を送ってくれていましたが、今はだれも農地を使ってくれる人がいなくなり、放置状態になっているという事情があって、相続放棄をする機会を失ってしまっているため、固定資産税の督促を受け預貯金を差し押さえまでされることになってしまったのです。市役所の督促に同封されて不動産の処分について相談をする不動産取引業者の紹介などが入っているのですが誰も引き取り手がない状況では全く役に立たないのです。残念ながら手の打ちようがないのです。

相続登記の義務化には全く解決することのできない深刻な現実が日本の各地の農山村で起こっているのです。放置される田畑、山林が大量に発生することは必定で、日本の環境にも大きな影響を与えることにもなります。

こうした放置される田畑・山林などを購入し管理する機関を創設する必要があるのではないかと思います。貧富の格差問題はしばしばマスコミや国会で取り上げられていますが、都市と農村の格差の問題はあまり取り上げられていないように思います。オリンピックや万博など大都市の巨大イベントの影で進行している農山村の疲弊問題に真剣に取り組んで行くことの必要性を発信したいと思います。

弁護士畑谷嘉宏